口腔粘膜疾患

白板症(はくばんしょう)

白板症(はくばんしょう)

口腔粘膜、とくに頬粘膜(きょうねんまく)や舌、ときには歯肉にみられる白い病変で、こすっても剥離(はくり)しないものをいいます。白板症は比較的頻度も高く、とくに舌にできたものは悪性化する可能性が高いため、前がん病変(口腔潜在的悪性疾患(こうくうせんざいてきあくせいしっかん)とも言います)の代表的なものとされています。びらん(粘膜の浅い欠損)をともなうこともあり、ものが当たると痛かったり(接触痛)、食べ物がしみたりします。

【原因】

喫煙やアルコールによる刺激、義歯などによる慢性の機械的刺激、ビタミンAやBの不足、さらに加齢や体質なども関係するといわれています。

治療

 
ビタミンAを投与したり、禁煙により治癒することもあります。しこりや潰瘍をともなうものは初期がんが疑われるため、必ず組織をとって検査する必要があります(生検)。白い部分が厚いもの、隆起したもの、びらんや潰瘍を伴うものは悪性化(がん化)する可能性が高いので、切除します。長年かかって悪性化する場合もあり、長期にわたる経過観察が必要です。

紅板症(こうばんしょう)

紅板症(こうばんしょう)

紅色肥厚症(こうしょくひこうしょう)ともいわれ、舌、歯肉、その他の口腔粘膜に発生します。鮮紅色でビロード状、表面は平滑な病変です。境界は明瞭なものが多くみられます。初発症状として多くの症例で刺激痛が認められます。一般的に50歳代以上の高齢者が全体の80%を占めています。

紅板症の50%前後が悪性化するといわれています。

治療

外科的に切除するのが望ましいとされています。悪性化する可能性が高いため、治療後にも経過観察を行う必要があります。

口腔カンジダ症

口腔カンジダ症

おもにカンジダ・アルビカンスという真菌(しんきん:かび)によっておこる口腔感染症です。急性型と慢性型があります。口腔粘膜の痛みや味覚障害が出ることもあります。

急性型である偽膜性(ぎまくせい)カンジダ症は灰白色あるいは乳白色の点状、線状、あるいは斑紋状の白苔が粘膜表面に付着しています。この白苔をガーゼなどでぬぐうと剥離可能ですが、剥離後の粘膜面は発赤やびらんを呈しています。白苔が認められない萎縮性(いしゅくせい)あるいは紅斑性(こうはんせい)カンジダ症は舌乳頭の萎縮や粘膜の紅斑が特徴で、偽膜性よりもヒリヒリとした痛みが強くなります。口角の発赤、びらん、亀裂を認める口角炎もカンジダが原因になっていることが多くあります(カンジダ性口角炎)。病変が慢性に経過した肥厚性(ひこうせい)カンジダ症では、白苔は剥離しにくく、上皮の肥厚を伴うようになります。

【原因】

カンジダ菌は口腔内の常在菌の一種で、普段はある程度以上は菌数が増えないように他の菌と共存しています。しかし、副腎皮質ステロイド薬の投与や糖尿病、全身衰弱などによって免疫力が低下している状態、唾液量の減少、長期間にわたる抗菌薬の服用などにより、常在菌間のバランスが崩れ、カンジダ菌が異常に増殖し、病原性を発揮することにより発症します。

治療

口腔内の清掃、抗真菌薬を含むうがい薬や塗り薬を使用しますが、時に抗真菌薬の内服を必要とすることもあります。

再発性アフタ

再発性アフタ

アフタは直径数ミリ大の円形の浅い潰瘍で、潰瘍の表面は灰白色~黄白色の偽膜で覆われ、潰瘍の周囲は赤くなっています。食物や歯ブラシなどがちょっと触れただけもズキッとした強い痛みを覚えます。また刺激性の食物や熱いもの、塩辛いものがしみたりします。アフタは何もしなくても1~2週間で治ります。アフタが再発を繰り返す場合に再発性アフタといいます。 なお、慢性再発性アフタはベーチェット病の一症状として生じることもあります。

【原因】

原因は不明です。機械的刺激、遺伝性、極端な疲労、ストレス、あるいは片寄った栄養摂取などいろいろな要素が絡み合って発症するといわれます。ベーチェット病では遺伝的素因が注目されています。

治療

副腎皮質ステロイド薬入り軟膏や口腔粘膜貼付錠、うがい薬を投与しますが、時に内服薬を用います。

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

扁平苔癬(へんぺいたいせん)

皮膚や粘膜にできる角化性で炎症をともなう難治性の病変です。口腔では頬粘膜に多く認めますが、舌や口唇にも生じます。白い粘膜の角化(かっか)がレース状にみられ、周囲に発赤を伴うのが特徴です。しばしば、びらんや潰瘍を形成し、接触痛を認めたり、食物がしみたりします。まれにがん化することもあります。

【原因】

アレルギー、とくに歯科用金属によるものや遺伝的素因、自己免疫疾患、ストレスなどの精神的因子、さらに代謝障害などの関与が考えられていますが、正確な原因は不明です。

治療

局所的には、うがい薬や副腎皮質ステロイド薬を含む軟膏を使います。歯科用金属によるアレルギーが疑われる場合は、原因と思われる充填物(つめもの)や冠(かぶせもの)を除去する必要があります。これらを除去する前に、歯科用の金属アレルギー検査を行います。

口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)

口の中が渇く

口腔乾燥症(こうくうかんそうしょう)

口の中が渇く(口渇といいます)のは、水分の摂取量が少なかったり、急激に多量の水分が失われた時(たとえば激しい運動時)に生じます。

慢性的に水分の摂取量の不足が続く場合は、全身的な疾患や何か重大な障害(たとえば腫瘍による嚥下困難)が考えられます。大量に水分を喪失する場合としては、高熱による多量の発汗や糖尿病による多尿など、原因となる重大な疾患があり、脱水の結果として口渇が生じます。

抗ヒスタミン薬や制酸薬(せいさんやく)、降圧薬(こうあつざい)や向精神薬(こうせいしんやく)の服用でも唾液分泌は少なくなります。

口腔がんや咽頭がんなどの放射線治療後では顕著な唾液分泌現象がおこることがあります。
鼻づまりによる口呼吸(こうこきゅう)は口腔粘膜の乾燥を促し、義歯が唾液の分泌を抑制する場合もあります。
また、シェーグレン症候群でも、唾液腺の分泌機能が著しく障害されるために口腔の乾燥(口腔乾燥症)がみられます。この病気では、同時に涙の分泌量も減少し、目の乾燥もみられます(「唾液腺の疾患」の項の「シェーグレン症候群」をご覧下さい)。

治療

シュガーレスガム、レモンなど唾液分泌を促進させるものを摂取する、人工唾液で唾液を補充するなどの対症療法が効果的です。近年、シェーグレン症候群による口腔乾燥に対しては唾液分泌を促進させる薬剤である塩酸セビメリンや塩酸ピロカルピンが開発され、高い効果を認めています。

また、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)や鉄欠乏性貧血(てつけつぼうせいひんけつ)など、全身性疾患の部分症状として、萎縮性の舌炎とともに口渇がみられる場合があります。このような場合は、原因疾患に対しての治療が必要になります。

ウイルス性疾患

ヘルペス性口内炎(へるぺすせいこうないえん)

ヘルペス性口内炎(へるぺすせいこうないえん)

単純性ヘルペスウィルスによる初感染で、疱疹性歯肉口内炎(ほうしんせいしにくこうないえん)ともいわれます。一般には無症状の感染(不顕性感染 ふけんせいかんせん)ですが、数パーセントが顕性感染(けんせいかんせん)としてヘルペス性口内炎の形をとります。大半が小児にみられますが、近年では核家族化に伴い大人にもみられます。

【症状】

全身的に発熱や倦怠感(けんたいかん:だるさ)がみられます。口腔粘膜には多数の口内炎ができ全体に発赤し、特に歯肉の発赤、腫脹、びらんが特徴で口腔内は不潔となり、口臭が強くなります。自発痛や接触痛も強く、噛むこと、飲みこむこと、話すことすら困難になることがあり、顎下リンパ節もはれます。

治療

入院した上で治療を行う必要がある場合があります。全身的な管理とともに、食事が困難な場合には、点滴やチューブで栄養を補給する必要があります。抗ウイルス薬による治療を行います。必要に応じて消炎鎮痛薬や二次感染の予防として抗菌薬の投与を行ないます。局所的には、うがい薬やトローチで口腔内を清潔に保ちます。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

子供の時になった水痘のヘルペスウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)が、神経内の付け根に残っていて、体調が悪いとそれが活性化されて発症します。神経の支配する領域に一致して、発疹が多発します。三叉神経(さんさしんけい)領域の顔面皮膚に好発します。広い範囲に帯状に発赤と小水疱(すいほう:水ぶくれ)がでます。必ず体の右または左側だけブロック状に発生し、全身に拡がることはありません。強い痛みを伴い、重症化する場合もありますので注意が必要です。

治療

重症の場合は入院が必要となり、全身的な管理とともに、食事が困難な場合には、点滴やチューブで栄養を補給する必要があります。抗ウイルス薬、消炎鎮痛薬のほか、二次感染の予防として抗菌薬の投与を行います。局所的にはうがい薬やトローチで口腔内を清潔にします。

帯状疱疹後には神経痛がのこることがあり、消炎鎮痛薬で奏効しない痛みに対しては、神経ブロック療法が必要になる場合もあります。

手足口病

手足口病

コクサッキーA16、あるいはエンテロウイルス71などによる感染で、口腔内の小水疱が破れてアフタ様病変となることに加え、手足の小水疱を特徴とするウイルス感染症です。

治療

小児科を受診しましょう。口腔および全身症状は軽く、特に治療はせずに自然治癒します。全身症状が強い場合は、対症療法を行ないます。

ヘルパンギーナ

ヘルパンギーナ

エンテロウイルス属、流行性のものは特にA群コクサッキーウイルスによる感染で軟口蓋から口峡部に発赤および多数の小水疱を認め、小水疱は破れて小アフタとなります。ヘルペス性口内炎が口腔の前方に症状を呈すのに対して、これは口腔の後方と咽頭での発症が特徴です。夏に流行しやすく、小児にみられることが多いのですが、まれに大人にも発症します。

治療

対症療法が中心となり、小児の場合は栄養、水分補給に気をつけます。

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