その他の疾患

舌痛症(ぜっつうしょう)

舌に炎症や潰瘍などの明らかな病変がなく、その色調や機能も正常ですが、患者が舌に慢性的なひりひり感、ぴりぴり感、灼熱感(しゃくねつかん)などの痛みを訴える疾患です。貧血に伴う舌炎による舌痛、糖尿病、薬物などによる口腔乾燥により二次的に生じる舌痛、歯列不正、咬耗に伴う歯および補綴物鋭縁、舌癖による舌痛、カンジダ症による舌痛などと区別する必要があります。中高年の女性に多く、食事中や何かに熱中している時には痛みを感じないことが多いのが特徴で、歯科心身症の代表的な疾患です。

治療としては、さまざまな方法が行われていますが、現在、最も有望な治療法は抗うつ薬を中心とした薬物療法です。

口臭症(こうしゅうしょう)

健康な人や口の中になんの異常もない人でも、まったく口臭のない人はいません。一般に口臭は空腹時に強くなるといわれています。また、タバコを吸いすぎたり、ニンニクやニラなどを食べれば、一時的に特有の臭いがするのも当然でしょう。このような口臭はあまり気にする必要のない、いわば生理的な口臭といえます。

一方、口臭は口の中の原因だけで生じるのではなく、消化器や呼吸器疾患、とくに鼻やのどの疾患、ときには代謝性疾患などで、臭いを出す物質が呼気の中に出てくるために生じることがあります。この場合は、これらの疾患に伴うなんらかの症状があるはずですから、原因のわからない口臭については、これらに関連した検査をする必要があります。

しかし、口臭の最大の原因は歯や補綴物(金冠、人工歯、ブリッジなど)に付着した食物のかすの腐敗、う蝕(むし歯)や歯周病などです。とくに辺縁性歯周炎(へんえんせいししゅうえん)では、歯の周りから出てくる膿(うみ)のために、かなり強い悪臭がすることがあります。本人はその臭いに気づかず、周囲の人が強く感じることも多くみられます。また、舌苔(ぜったい:舌のこけ)や唾液分泌の減少による口腔(こうくう)内の自浄作用の低下も口臭の原因となります。

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(へいそくせいすいみんじむこきゅうしょうこうぐん)(OSAS)

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)とは睡眠中に断続的に無呼吸(むこきゅう:10秒以上続く気流停止)を繰り返し、その結果、日中の眠気などの症状に加え呼吸循環系への障害をきたす疾患で、中年男性のいびきをかく人や肥満者に多くみられます。

確定診断のためには、医療機関での症状の確認、終夜モニターであるポリソムノグラフィー(PSG)などの検査が必要になります。

治療としては、肥満のある人では減量が基本的治療として重要ですが、経鼻的に上気道に一定圧の空気を送り込んで上気道をつねに陽圧に保つことにより睡眠中の上気道の閉塞を防ぐ経鼻式陽圧呼吸(NCPAP)(けいびしきようあつこきゅう)が行われてきました。しかし、口腔内装具(マウスピース様の装置)により下顎を前方に位置付けて上気道を拡張させ治療する歯科的治療が効果的であることがわかり、保険適応となりました。コンパクトで携帯も便利で、NCPAPにうまく適応できない人にも適応でき、広く普及しつつあります。また、症例によっては、軟口蓋の一部や顎骨を切ったり,骨を延長したりして気道を広げることもあります。