歯と歯茎のトラブル

口唇や頬の粘膜に黒い色素斑がある/歯ぐきに色素斑がある

口腔粘膜は皮膚に比較して生理的メラニン色素の分布ははるかに少ないものです。

しかしメラニン沈着が白人より多い有色人種では、歯肉、口唇、口蓋、頬粘膜に生理的にメラニンが沈着することがしばしばおこります。また加齢とともに粘膜でも皮膚と同様に色素沈着の傾向は強まります。

これに関しては特に処置の必要はありません。審美的障害がなければ放置しておいてもよいものです。障害が強ければ切除、ドライアイス、トリクロール醋酸、フェノールアルコールによる脱色を行います。

いずれにしても生理的色素沈着と病気との鑑別が必要ですので、口腔外科での受診をおすすめします。

[色素沈着を主徴とする疾患]

び漫性メラニン色素沈着

生理的色素沈着

歯肉、口唇、口蓋、頬粘膜に生理的にメラニンが沈着することがしばしばおこります。また加齢とともに粘膜でも皮膚と同様に色素沈着の傾向は強まります。特に処置の必要はありません。

アジソン病

副腎皮質の慢性機能不全により皮膚、粘膜の色素沈着をきたす希な疾患です。原病の治療と、副腎皮質ホルモン製剤等の投与とともに、栄養の改善を図ります。必要があれば切除します。

アルブライト症候群

レックリングハウゼン病

全身の皮膚にミルクコーヒー色の特有な色素性母斑が多発し、全身に多発性の神経腺維腫がみられる疾患です。
口腔粘膜には通常色素斑はみられず、神経線維腫としてみられます。口蓋、舌、歯肉、口唇、頬粘膜などで、無痛性のやわらかい腫瘤としてみられます。口腔内については腫瘤は小さいと放置してもよいですが、障害があるものは切除します。

ポイツ-ジェガース症候群

手、足、口腔粘膜の多発性色素斑と、胃腸にポリープを生じるまれな優性遺伝性疾患です。口唇の色素斑は放置してもよいが、審美的要求の強いときには脱色します。
など。

色素性母斑

メラニン色素産生細胞の過誤腫(ある組織や細胞の構成細胞が過剰に増殖して腫瘤をつくることがあります。構成が異常である細胞群が特別に増殖し、腫瘤を形成したもの)的増殖によるものです。悪性黒色腫・血管腫との鑑別が必要です。

処置:摘出が望ましい。とくに口腔内の色素性母斑は、悪性化を考えて摘出します。

重金属による色素沈着

過去に薬剤として投与された亜鉛、水銀、また職業性に慢性に接触して吸収された鉛、水銀、銀などが歯肉など慢性炎症のある部位にとりこまれ、着色したものです。

悪性黒色腫

発現年齢は50歳以降に多く、性差はない。硬口蓋と上顎歯肉に多いが、下顎歯肉、頬粘膜などにも生じます。
黒褐色に着色した種瘤で、種々の大きさや形を形成しますが、着色が明らかでない場合もあります。
またリンパ行性あるいは血行性の転移が多く、予後は極めて悪いものです。
治療はリンパ節の郭清を含めた外科手術が主ですが、化学療法なども補助的に行われています。

黒色表皮腫

黒褐色の色素斑と乳頭状増殖を特徴とする疾患です。原因は悪性腫瘍(胃がん)、内分泌異常(下垂体腫瘍、アジソン症候群、糖尿病)、肥満、遺伝が関与すると考えられています。原因となる疾患を除去すると、粘膜症状の多くは軽快ないし消失するので特に処置の必要はありません。